東京高等裁判所 昭和25年(う)4912号 判決
原判決が被告人の住居として東京都品川区北品川二丁目一七二番地となつていて、原審第一回公判調書中、被告人の供述した同人の住居が東京都品川区北品川二丁目一七三番地となつていることは洵に所論の通りである。成程刑事訴訟規則第五十六條第一項は裁判書に裁判を受ける者の氏名、年令、職業及び住居を記載することを要求してはいるが元来裁判書に裁判を受ける者の氏名、年令、職業及び住居の記載を要求しているのは裁判の既判力等との関係もあつて、裁判を受ける者の同一性を確定するに在るのであるから、その記載は裁判を受ける者の同一人たることを認識し得るに足る程度の表示をもつて充分とするのである。今これを本件について見るのに、原審第一回公判調書に在る被告人の供述による住居の地番は一七三番地となつているが、原審において適法な証拠調を経た現行犯人逮捕手続書の記載及び司法警察員作成に係る被告人の第一回供述調書の記載によれば、被告人の住居の地番は孰れも一七二番地となつていて、原審はこの後者の記載を採つて、これを真実と認め、判決における被告人の住居の地番としたことが明らかであり、而も記録を通じ、前記原判決の地番に該当する個所に、同名異人あることを疑わしむべきものの存するあるを認め得ないところでもあるから、仮に誤まつて三を二と記載したものとするも、被告人の同一性を確定するに不充分とするを得ない。従つて原判決は前示規則の命ずる記載要件を欠いた違法の判決であるとする所論は当らない。論旨は理由がない。